京都大学防災研究所 流域災害研究センター 沿岸域土砂環境研究領域
Laboratory of Coastal Sedimentary Environment
Research Center for Fluvial and Coastal Disasters, DPRI, Kyoto University
来たるべき津波災害に備えて,動力のいらない可動型の防波堤として“流起式可動型防波堤”の実用化を目指した実験を行っています。この防波堤は,平時には海底に倒伏した円弧上の鉄製板と合成ゴム連結部からなっており,津波発生時には,津波の流れによって自動的に立ち上がり津波本体を減勢します。また,引き波時にも立ち上がることによって,港内からのコンテナや小型船の流出を抑止できます。
2011年東日本大震災による大津波によって沿岸の防波堤や防潮堤は甚大な被害を受けました。その後の復旧過程において津波の大きさをレベル1とレベル2の2つに分けて,それぞれに応じた水準の防災手段を講じることが提案されています。すなわち,100年に1度程度襲来するレベル1津波に対しては,防潮堤や防波堤等のハード施設で防護し,1000年に1回程度の頻度しか有しないレベル2津波に対しては,ハードウエアによる減勢に加えて,警報システムの整備による迅速な避難等のソフト対策を整備しようとするものです。この時,避難場所としては,高台の体育館や公共施設が考えられていますが,避難距離が長くなる可能性もあるので,一時避難場所として避難タワーや,避難ビルの整備が各地の沿岸域で進んでいます。津波避難タワーは,円筒ビル型と鉄骨フラット層型があり,海岸線から500~1000m程度の短時間で避難できる範囲に設置されています。しかしながら,設置個所が所要の面積を必要とする平面上の敷地であり,現地での製作工事が必要で,コストと時間がかかり,必要な個数の整備が進んでいません。
そこで本研究では,1本の支柱で支持できる津波避難タワー”一本松“を提案し,その作用波力を実験で確認することを行っています。図に一本松型避難タワーの設置イメージを示します。
宇治川オープンラボラトリー第3号実験棟内にある“津波再現水槽”(Fig.1)は長さ45m,幅4m,深さ2mの水路です。水路の一端には,ピストン型造波装置,流れ発生装置および水塊落下装置が設置され,津波,高潮,うねり,風波などを再現することができます。また,それらの現象を組み合わせた状況も起こすことが可能です。
この水槽の津波再現装置の反対側には,取り外しが可能な1/10斜面が設置されています。今回の実験では,1/10斜面の一部を用い,上方を水平床として陸上部とみなしました。斜面と陸上部の境界に実験サイズで高さ15㎝の胸壁を設けて(Fig.2),防潮堤を再現し,それに作用する津波の圧力を測定しました。実験では,防潮堤の安全度や,漂流物の衝突力,防潮堤を越流した津波による背後地盤の浸食等を調べています。