研究

研究テーマ


裸地斜面における凍結融解による土砂生産に関する検討および土石流発生状況の現地観測

 凍結融解により風化した岩盤が破壊され新たに土砂が生産される現象は、流域全体に分布する裸地において恒常的に起こり、冬期に一般的に見られる現象である。この種の土砂生産は、対象地域の気候や地質、地形に依存する現象で、長期的な視点から、山地斜面から河道へ供給される土砂生産のポテンシャルを表わしていると解釈することができる。流域全体の裸地分布、気候、地形から長期的な土砂生産ポテンシャルを計算し、それを流域全体の土砂生産量の推定に用いることは比較的容易で有効な手段になりうる。これまで、冬期の凍結融解に関する現地観測や熱伝導解手法により岩盤の凍結融解をシミュレートし流域全体からの土砂生産量の推定方法の開発等を行っている。

ヒル谷源頭部現地観測

 また、凍結融解等によって生産され斜面脚部に堆積した土砂は、その後の降雨に際し、土石流の発生場となり得る。土石流発生に関する研究では多くの場合、土層の飽和度は一定として検討がなされているが、実際の土石流発生域での観測事例は,土石流の発生時に土層が全層にわたって飽和していない可能性が指摘されている。土石流発生域とみなされるヒル谷源頭部の渓床堆積物に関して継続的な観測を行い、土砂移動発生時の水分動態を捉えるための現地観測等を継続的に実施している。


融雪型火山泥流発生機構に関する研究

 焼岳の冬期の積雪は最大で10 m近くになる場所もある。一方、噴火時の噴出物は数100℃、時に1000℃に達する高温になることがあると考えられている。これら高温の火山噴出物が、山全体を覆う積雪の上に降り積もると,短時間で雪を融かし、大量の水と土砂が泥流となって流れ下る事が起こりえる。この現象は「融雪型火山泥流」と呼ばれ、防災の観点から非常に恐ろしい現象と考えられる。この融雪型火山泥流による災害を防止・軽減するため、数値シミュレーションの予測精度向上と、その結果としてのハザードマップの信頼性向上を目的として、現地実験および融雪過程のモデル化を行っている。
 また、融雪型火山泥流発生過程のモデル化において必要な、積雪層内の融雪速度と浸透速度の大小を決定する条件や、融雪出水量に対し影響が大きいと考えられる含水量、積雪密度の時系列変化を知るため、土木研究所との協力のもと現地観測を行っている。

シミュレーション

噴火による融雪に伴う泥流は,発生事例が少なく、発生過程について不明な点も多い。しかし、数値シミュレーションによる予測精度の向上のためには、発生する泥流の規模とタイミングを予測する必要がある。発生過程について、融雪過程のモデルと取り入れ、さらに融雪水の浸透,流下とそれに伴う斜面崩壊の発生などを考慮し、泥流発生過程のモデル化を行っている。ここで得られた発生泥流のハイドログラフを2次元の泥流モデルの入力条件として、泥流の到達範囲やタイミングについてシミュレーションを行っている。


掃流砂計測手法の開発

掃流砂観測における観測結果の比較 水平型ハイドロフォンと鉛直型ハイドロフォン

 山地流域における土砂動態に関して、観測される流砂量は土砂生産・供給源の規模や季節変動に依存し、河川流量のみに依存するわけではないことが知られている。このため、流域の総合的な土砂管理や、土砂・河川災害の防止・軽減のためには、流砂量の実測が不可欠である。最近では、間接的な計測手法として、音響センサーを利用したパイプ式ハイドロフォンやスイスにおいて開発されてきた、プレート式ジオフォンによる掃流砂観測手法が広く用いられるようになった。
 それぞれの計測手法は、基本構造や用いるセンサーの違いから、それぞれの利点や欠点があるが、これまでは定量的な比較検討がなされてこなかった。当観測所ではSwiss Federal Institute WSLとの共同のもと、足洗谷観測水路とスイスのErlenbachにおいて、パイプ式ハイドロフォンとプレート式ジオフォンの双方を設置し、掃流砂観測における観測結果の比較検討を行っている。また、従来の水平型ハイドロフォンに加え、鉛直型のハイドロフォンを設置した新たな計測手法についても検討を進めている。その他に、日本工営株式会社との共同のもと、荷重計型の掃流砂観測装置の開発を行っている。


表層崩壊解析手法の検討

崩壊予測モデルの開発

 豪雨に伴って発生する表層崩壊についての解析手法を検討している。近年発生した表層崩壊(2012年の阿蘇山周辺、2013年の伊豆大島、2014年の広島等)は、崩壊発生域が広範囲に及んでおり、単一斜面を対象としたシミュレーション手法では対応できない。一方で、流域単位を対象とした既往の分布型の崩壊予測モデルでは、相対的な斜面安全率を算出することによって危険度を判定できるものの、崩壊発生のタイミングや土砂量までは推定できず、その後の土砂流出現象へ解析を繋げることができない。そこで、地形データを元に流域をトポチューブによって分割し、それぞれ単独のチューブに対して降雨流出モデルによって斜面土層内の地下水位を計算し、その結果を臨界すべり面探査手法を用いた斜面安定解析に入力値として用いて、斜面安全率を求める崩壊予測モデルを開発している。


火山地帯における降雨流出機構

Mt.Merapiと噴火後の土石流により一部が破損した砂防堰堤

 火山がひとたび噴火すると、火山噴出物(火山灰、火砕流堆積物など)によって山腹斜面が覆われ、土石流の発生頻度および規模が激増する危険性がある。これは、火山噴出物による浸透の阻害や植生の衰退が原因と考えられる。噴火後は降雨-流出過程が噴火前とはまったく変わってしまうことを意味する。したがって、流出特性の変化を考慮し、噴火後の土石流発生予測を行わなくてはならない。一方、斜面を覆った火山噴出物は、物理的、化学的な変化により、時間の経過とともに浸透特性が変化すると考えられる。そこで、非常に噴火頻度の高い桜島と2010年に大規模噴火が起こったインドネシア・Mt. Merapiを対象として、現地実験、現地観測を実施し、噴火に伴う流域特性の変化を考慮した水文モデルの開発を進めている。


山岳河川におけるフラッシュフラッド発生機構

金木戸川・双六谷の様子。河道の両岸が切り立っているため,急激な出水に対して避難が困難な地形である。

 急峻な山岳河川においてフラッシュフラッド(鉄砲水)と呼ばれる急激な出水による災害事例がしばしば報告されている。数分~30分の間に河川水位が数十~100cmと急激に上昇する出水現象であり、このような現象は、当該箇所で降雨が無いもしくは弱いときにも発生することがある。そのため、避難が間に合わす、河川利用者(ハイキングや魚釣り,登山者)が被害を受ける事例が起こる。そこで、神通川水系金木戸川を対象として、現地観測と数値シミュレーションを組み合わせることで、フラッシュフラッドの発生機構の解明および渓流ごとの発生危険度に関する指標の検討に取り組んでいる。


TDRを用いた流砂観測手法の開発

堆砂池を模したコンテナに堆積する土砂の形状および固相率計測の検証実験

 山地流域における流砂量は河川流量のみに依存するわけではないことが知られている。そのため、流域の総合的な土砂管理や、土砂・河川災害の防止・軽減のためには、観測による山地河川での流砂量の把握が不可欠である。これまで、多くの流砂観測手法が提案されているが、それぞれ利点と欠点をもつため、観測対象河川の特徴にあった手法を用いる必要がある。一方、堆砂池や空き容量のある堰堤上流などでは、堆積土砂量を連続観測することで、流砂量を求めることができる。そこで、土壌水分計測などに用いられるTDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射測定法)を利用し、水面下の堆積土砂面形状(河床位)および堆積土砂の固相率を計測するシステムの開発を進めている。

排砂実験

ヒル谷試験堰堤

 山地河川の流砂現象とそれに伴う河床の変動については、過去に様々な計測手法が提案されており、近年にも、技術の発展を取り入れて新たな手法が提案されてきている。手法ごとに計測に適する地形などが異なるため、新たな手法は計測可能な場を広げることにつながる。そこで、ヒル谷試験堰堤において試験的に排砂を実施し、新規手法や既存手法を相互比較することで、それぞれの適用可能範囲を明らかにし、改善に向けた検討を行っている。この研究は、計測手法開発や山地河川での土砂動態、河床地形変化を研究するグループと共同で行っている(東京大学、新潟大学、静岡大学など)。


天然ダムの越流、決壊に関する現地大規模実験

 大規模な斜面崩壊や土石流によって河道が閉塞し貯水池が形成される天然ダムは、その後の越流や決壊によって大規模な土砂流出が発生し、激甚な土砂災害を引き起こす恐れがある。このような天然ダムの決壊過程について現地実験した例は少ない。本観測所では、立命館大学と共同のもとヒル谷において自然河川を土砂でせき止めて人為的に天然ダムを作成し、その後の越流、決壊と土砂流出過程についての大規模現地実験を行っている。


研究報告


文部科学省:学校施設の防災力強化プロジェクト(平成28年度)成果報告書

 文部科学省の「学校施設の防災力強化プロジェクト(平成28年度)」を受諾し、「栃尾小学校における土砂災害に対する警戒避難のための観測プロジェクト」というテーマにて事業を実施しました。

  成果報告書(PDFファイル)
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